前回はガズニン絨毯の発祥の地や歴史などに触れましたが
今回は素材やつくり方についてお話していきます。
【素材】
ガズニン絨毯の最大の特徴は、なんといってもそのウールです。
標高2,220メートルの高山地帯で育つガズニンの羊(ガズニンウール)は、
強いクリンプ(繊維の縮れ)を持ち、毛足は30センチにも及びます。
さらに毛の表面を覆うキューティクル(スケールと呼ばれる鱗状の組織)が豊富で、
毛の内部に空気の層をため込みやすいため、非常に保温性に優れています。
また、ガズニン絨毯はこの縮れた毛の表情を生かしながらも、
ふくらみすぎないよう丁寧に織り上げられます。
厚みはわずか1センチに満たず、軽やかで上質な風合いを持っています。
【糸紡ぎ】
ガズニン絨毯の製作は分業制で行われています。
大きく分けると
「ウールを撚って糸をつくる」
「染める」
「織る」
この3つの工程に分かれています。
クリンプ(縮れ)の強いガズニンの羊毛を、絨毯に適した縮れを抑えた糸に紡ぐことは、
非常に難しい作業なのです。
さらに染色の工程でも、縮毛なため、色が均一に染まりにくく、
「アブラッシュ」と呼ばれる自然な色むらが生まれます。
このむらは糸と糸の間だけでなく、一本の繊維の中にも現れることがあります。
そして、織りの工程では、完全には伸びきらない縮れ毛を扱うため、
まっすぐな糸を使うよりもはるかに高度な技術が必要とされます。
つまりガズニン絨毯の製作においては、どの工程でも羊毛の強い個性が影響し、
それを扱う職人には高度な技術が求められる。
この高度な技術は、一朝一夕には身につかないものであり、職人の育成には長い時間を要する。
そのため、熟練の職人自体が少なく、結果としてガズニン絨毯は「技術の希少性」という
側面からも貴重な存在となっている。
【織り方】
ガズニン絨毯の織り方は「ダブルノット」
2本の縦糸に糸を結びつけ、その上から1本の横糸で補強して解けないようにする織り方です。
この技術は、強度を高めるだけではなく、高密度で緻密なデザインを織り上げる際にも用いられます。
ガズニン絨毯は、大柄で奥行きのあるデザインが多い一方で、厚みは他の絨毯に比べてかなり薄く仕上げられています。
そも薄さで強度を保つために、このダブルノットの織りが適しているのです。
【染色と色彩】
ガズニン絨毯は、他の手織り絨毯にはあまり見られない、色彩豊かな表情を持っています。
その理由は、草木染めと化学染料による「重ね染め」という独特の染色方法にあります。
ガズニ州は豊作物の収穫が盛んな地域で、周辺から作物が集まる集積地でもあります。
しかし、先進国のように流通網が整っていないため、過剰に生産された作物は廃棄されることも少なくありません。
ガズニン絨毯の染色では、それらを原料としてまず草木染めを施します。
ガズニウールは縮毛なため、草木染めでは染まりきらず、
自然な色むら(アブラッシュ)が生まれます。
その上から化学染料で重ね染めを行い、草木染め特有の風合いを残しつつ、
鮮やかで深みのある色彩を引き出していきます。
こうして生まれるのが、ガズニン絨毯ならではの、自然な風合いと複雑で豊かな色彩なのです。
その最大の特徴は、「工房にある色糸からデザインを決める」という、
他にはない発想にあります。
多くの絨毯がデザインを先に決め、そこに色を合わせていくのに対し、
ガズニンでは今ある色を基に構想が生まれます。
そのため、どの一枚も同じものはなく、偶然の調和から生まれる色彩が、ガズニン絨毯だけの唯一無二の魅力となっています。
【シルキー加工】
ガズニン絨毯の最大の特徴のひとつが、まるで光を宿したように輝く艶です。
この艶は「マーセライズ加工」と呼ばれる工程によって生まれます。
お菓子の艶出しや石鹸、洗濯洗剤などにも用いられる水酸化ナトリウムが使用され、
ガズニウール本来の風合いを損なわないよう細心の配慮のもとで施されています。
シルキー加工とも呼ばれるこの工程は、もともと自然な色むら(アブラッシュ)のある部分に艶の濃淡を生み出し、
絨毯全体に立体感と奥行きを与えます。
さらに、ウールそのものの個体差も、色彩の深みや表情の豊かさを生む大きな要素となっています。
【ガズニン絨毯の品質】
ガズニン絨毯は、毛質・染色の美しさ・織りの細かさ(デザインの緻密さ)によって
「ブラックタグ」、「ブルータグ」、「ホワイトタグ」の3つのランクに分けられており、
その中でもアブラッシュ(自然な色むら)の表情が最も美しく現れる「ブルータグ」が中心です。
同じようなデザインでも価格が異なることがありますが、それはランク
つまり毛質や織りの精度といった要素が違いによるものです。
・ブラックタグ
ガズニウールの中でも最も繊細な部分、急所を保護する「顎毛」から採取されたウール。
調湿性、保温性に優れ、きめ細やかで滑らかな手触りが特徴です。
細かい糸で織り上げる技術をもつ織子さんの数も少ないことから、
約30枚に1~2枚ほどしかなく、非常に希少な最上質ランクです。
・ブルータグ
ガズニウールの中でも最も脂分を多く含むお腹の部分の毛。
脂分が多いため、染色時に自然な色むら(アブラッシュ)が最も美しく現れます。
ガズニン絨毯の中でも、このブルータグが最も多くを占めています。
・ホワイトタグ
直射日光を最も受けやすい背中の毛。
ダメージを受けやすい反面、採毛量が多く、素朴な風合いが魅力です。
フォークロアテイストのデザインによく用いられ、価格も手頃なため
「ファーストラグ」として選ばれる方も多くいます。